農場HACCP認証の構築 構築編2 ~構築の本丸

農場HACCP認証の構築 構築編2 ~構築の本丸 nogutikusanの極意

今回は第3回目となり、構築の準備が大事とお話をした第1回、構築には責任者によりすすめ方が違うことをご説明した前回に続き、構築が多く、大変重要な位置づけになるHACCPチーム員の仕事をお話しましょう。

チーム、責任者、従業員、そして経営者とチーム一丸となって取り組むことでHACCPの考えが浸透し危害を防ぎ、安全な畜産物をお客様にお届けできるのですが、構築当初はそこまでの意識を持つことは多くないのが実情でしょう。

それは、認証基準作成と現場運用に温度差があるからです。

小さい規模の農場では、作成のかたわら農場業務を行います。構築は現在の仕事内容を記載していきますが、その時々で作業方法を変更していることが多いはずです。

杓子定規で手順を決めると1日のうちに作業を終えることが出来ないため、例えばワクチン投与は畜種によりましょうが日程が過密になっている場合は変更なく行いますが、農場管理(清掃業務に関するもの)は時間都合で途中省略したりして完結しない場合もあります。

一人の受け持ちは1作業のみでない場合が多く兼務していることから、やむを得ないところでしょうがこの農場HACCPを知っていただくことで、時間がない中その危害をどのように排除するのか、
天秤にかけながら作業を行う習慣が生まれます

しかし従事者にその大事なことをお伝えできていない場合は、現場認証用の基準が存在し、作業の基準は別にあるというミスマッチが生まれ、結果HACCPは意味がない、認証の良さが見えない、第三者が見ていても何が良いのか懐疑的となりモチベーションが下がる場合や、意識がないことで農場HACCP認証の存在を知らないと言う人まで現れましょう。

そのようなことないように構築し指導し実践して定着化を図るのですが、そのためにもHACCPチームの選任は重要ですし、良い構築をしてい頂く必要があるのです。

そこまでの発想なく構築を開始する場合も多いため、後々ご苦労していく農場もあり、機能不全に陥りご相談をいただくという傾向も見られます。

是非、その点を踏まえて今回も最後までお読みください。きっと解決できる方法があると感じております。

目次
1、農場HACCP認証 準備編 ~何を準備するのか
2、農場HACCP認証 構築編1 ~何から始めますか 
3、農場HACCP認証 構築編2 ~構築の本丸  (このページ)
4、農場HACCP認証 教育しましょう ~何を教えましょうか 
5、農場HACCP認証 検証と完成 ~最後の調整をして申請しましょう 

1、HACCPチームが構築すること
HACCPチームは農場HACCP認証構築の上で大変重要な位置になります。ですから人選も大事なことをお話いたしました。

しかし人材が潤沢でない農場では作業者や管理者には十分伝わらずチーム員となることで特に考えることなく人在となり意味を持たないということも多いのも実情です。

その原因はチームとは何かを説明できていないことにあると思います。

ですから多くは認証基準を知るチーム責任者や指導者に丸投げすることが近道となり、構築担当者と考えないチーム員という構図が出来上がり、文頭の別の基準が存在してしまい、モチベーションが下がり、システムが消滅していくという悪循環に入るわけです。

ですから、教育が大事になるのですがそれは次回に譲りチーム員の構築をお話しましょう。

農場HACCP認証の要となるのは第3章と第4章です。大雑把に言えば第3章が完成し、第4章で危害を分析できればシステム運用ができ、とりあえず開始できるというくらいのもので、まさに本丸なのです。

そして、この大事な部分を受け持つのがHACCPチームになります。

まず第3章ですが、ここでは後の4章危害要因するための準備として「現状作業の作成(作業分析シート)」「原材料リストと製品の特性等を考慮した説明書作成」「農場内の動線図を作り交差汚染の検討」「使用する原料と作業の関係を可視化した図を作り危害予測するうえでの資料作り」と多く構築をしていきますし、本丸と呼ばれる位置づけなのです。

どれも大事であり、作成に欠落がある場合多くは審査時「懸念事項」の指導を受けたり「不適合」と評価されたりします。多くの文書作成には基準に従った要件がありその基準に従い作成しなければなりません。
ですから時間をかけて作成していく必要があるのです。
では、1つづつ見ていきましょう。

①原材料リストを作ります
作り方にはいくつかの要件があります。
原料に対し、「特徴」「予測される危害」「予防措置」「供給者」を明記します。
つまり、受け入れる原料はどのようなもので、その物に危害がありうるのか、あればどのように予防できるのか、そして購入先はどこかをリストにしておきます。
作成することで、原料に対する危険性を認識でき防止する方法を予め考えることが出来ます。何より安全な原料の受け入れは事故防止の観点から重要です。作業だけでは危害は防ぐことはできません。
原料(入ってくる危害)からの危害を排除することも非常に大事ですしHACCPの考え方でもあるのです。

例えば、採卵鶏の場合で成鶏農場が認証する場合は、原料には「大びな」があり、特徴として採卵鶏(ボリスブラウンやジュリア)と記載できます。
予測される危害として病原微生物の持ち込みと記載できます。(鶏からの持ち込み、大びな導入時の作業者からの持ち込みもありえましょう)

予防措置として、サルモネラ検査結果の確認として検査証の確認、ワクチンプログラム履歴の確認と記載できます。(採卵鶏ではサルモネラ対策の公表は必須です。ワクチンプログラムは病気予防の観点からしっかり行うことが重要であることから、実施が分かる書類として有効です)
供給者は、○○大びな養鶏株式会社と記載できます。(買い付ける大びなの会社名を記載します。また、自社育成の場合は「自社育成」と記載します)

同じように、原料には「水」「餌」「ワクチン」もあります。同じように考えて見ましょう。

②製品説明書を作ります
作り方にはいくつか要件があります。
出荷される製品に対し「家畜・畜産物の特徴や特性」「家畜・畜産物の出荷形態」「家畜・畜産物の保証期限及びその条件」「家畜・畜産物の出荷先」「家畜・畜産物の出荷先への情報」
「家畜・畜産物の流通上の特別な管理」「家畜・畜産物の用途」「予測される取り扱い」「予測される誤った取り扱い」「最終消費者の特定」を示します。
まず、「家畜・畜産物の特徴や特性」ですが、採卵鶏である場合生卵の出荷がメインになりましょう。またビタミン強化卵等特殊卵となる場合はその技法で飼育していることを示します。
後にふれますが、採卵鶏では生卵の中には「加工向けに出荷」している卵もありましょう。(傷卵や軟卵等を割卵した液卵としての出荷等)また最終的に「廃鶏」も出荷しているはずです。これも記載が必要です。

家畜・畜産物の出荷形態」として原卵出荷となります。(生卵の殻付きでの出荷となるからで、自社・他社GPセンターでの出荷は農場HACCP認証の範囲にありませんから記載しません)
家畜・畜産物の保証期限及びその条件」として、採卵当日出荷と記載することが多いでしょう。(これは、出来るだけ早く温度管理ができる施設で保管してほしいこと、早めに消費者に届けて消費してほしいことを示します。しかし現実は自社GPでは可能でしょうが、他社GPでは集荷次第となりましょうから、その方法で農場が責任を負える範囲であればその期限でも可能でしょう)
家畜・畜産物の出荷先」は、出荷先を記載しましょう。(自社GPセンターでも良いでしょうし、○○たまごGPセンターと外部先を記載してもよいでしょう)
家畜・畜産物の出荷先への情報」は、製品について出荷先へお伝えしていることを記載します。自社であっても何等かお伝えすべきものがあるはずです。

今後食品業界はHACCPの考えを取り入れた作業を義務化します。このためにも製品の安全である証明説明は必要です。(採卵鶏ではサルモネラ検査による科学的根拠は必須です。陰性であることを説明はできるようにしましょう)
家畜・畜産物の流通上の特別な管理」は、自社GPであればインライン(農場から自社GPまで一直線の集荷体制)と記載できましょうし、他社GPであれば運搬車両での交差汚染防止の観点から専用車両による出荷となりましょう。
家畜・畜産物の用途」とは、その製品をどのように使われるのか考えます。鶏卵は2つしかないのですが「生食用」「加工用」となります。
予測される取り扱い」は、最終消費者はどのように製品を扱うのか記載します。鶏卵では「生食での喫食」「温度管理された流通」と記載できます。(卵は加熱して食べる人もいますが、リスクがありうるのは生で食した場合でしょうし、実際生で食べることも想定できます。
また、冷蔵庫で保管される方も多いはずですので温度管理されている状態と予測できるのです)
予測される誤った取り扱い」とは、最終消費者が起こす可能性がある誤った管理です。多くは温度に関すること、調理不良に関すること、消費期限超過によることになりますが、卵では常温保存による不適切を想定することが多く、それ以外2つはあまりないため記載しないことが多いといえますし、加熱不良はいわゆる半熟で一般的です。
最終消費者の特定」は、消費者が一般的で、加工向けの場合は加工業者となります。(近年は消費者の中にハイリスク者(乳幼児・老人・病人)も含まれると懸念事項で指摘されることも多くなりました。調理による問題が想定されハイリスク者に提供する場合は記載することが望ましいといえます)

製品説明書は、1製品につき上記を1枚作成します。ですから複数の製品となる場合(特殊卵である場合、廃鶏である場合)にはそれぞれ用意しなければなりません。
ですから、採卵鶏では最低2枚以上となります。

この製品説明書は、品質保証書とみなされる場合があります。(多くは昔からの付き合いなのでうるさくないことも多いのですが、近年は食品現場のHACCP義務化に伴い、受け入れの保証書として活用したい旨申し出あることもあり、安易な記載は影響を及ぼす場合があります)
ですから、HACCPチームが文書を検討しますが、経営者が主体で検討すべき事項であると私自身はご指導しております。

③フローダイヤグラムを作ります
フローダイヤグラムとは、使用する原料と作業の関係を線で結び、可視化した図で、先ほどの原材料リストの危害が作業にどのように及ぼすのか予測できるものです。
手書きで作ると簡単ですが、パソコンで作成する場合少し技術がいります。線の結び方や可視化するために良く見せる作り等なれない場合はご苦労されることでしょう。
出来上がったら、農場責任者と共に現場を確認します。確認後HACCP責任者がこれを承認します。

④現状作業(作業分析シート)を作ります
一番文書作成で時間を要する箇所になります。農場の作業1つ1つについてどのような作業なのか1作業1枚の紙にして書きます。
書き方には要件があり、生産工程に関わる作業は「工程内作業」それ以外は定期的に行う作業は「定期作業」期間を定めない場合は「不定期作業」と区別します。

多くは、「工程内作業」と分類し、その中でも月1回や週1回となるような作業を「定期作業」と区別し、農場環境整備の草刈り等は「不定期作業」とざっくりと分ける場合が多いと感じますし、それによる不具合も感じません。

その後、作業には(準備作業)(本作業)(後作業)と分けて記述していきます。
多くは、その作業を行う場合に機材を整える必要があれば(準備作業に)記載し、その作業の本丸部分を(本作業)に記載し、終了し機材を片付けたり洗浄したり、その作業を行った事実を記録することを(後作業)に記載します。

このように分けて記載することで、その作業には何が必要な機材がわかり、その作業の目的は何か本作業を見ることで明らかになります。その結果その作業を邪魔する工程は何か予測でき、そのための注意点を考えることが出来ます。

そして、何事もそうですが、実施した事実はどこに記載されるのか明示することで記録先が明らかになります。

説得力ある文書でしたが、作成しているときはそこまで意識は回りません。(私自身そうでしたが)
ですから多くは記載漏れや不備が多く、審査の際かなり細かく聴取されることも多いのです。

また飼養衛生管理基準から見て不十分な個所もあるはずです。(多くは家畜の死骸の取り扱いに関すること)そこは、新たに基準に合うように整備しなければならないことが多いでしょう。

出来上がったら、農場責任者の現場確認を行い、その通りであることを確認したうえでHACCP責任者が承認をします。

⑤生産環境の文書化をします
家畜との交差汚染リスク、人モノの動きを可視化して動線図を作ります。また施設の清浄度を区別し汚染度の少ない順に区別しておきます。
清浄度が低い場合は交差汚染のリスクが上がりますので対策を意識します。

2、危害要因分析を行います
危害要因分析を行うには、第3章で準備した資料の他、記録表に記載されていることの確認と記載方法の適正化を確認します。
法令の観点、衛生状態を維持すること、第Ⅱ部畜種別衛生管理規範を参考に構築していきます。
これらを基に作業分析シートでは不足している内容を記述追加して徹底するか別の規定書を作成するなどして条件を満たさなければなりません。
これらの漏れを防ぐために、整理表を作ります。
飼養衛生管理基準には、どの基準があてはまっていて、それを確認する記録表はどれなのかを一覧にしておくのです。
飼養衛生管理基準は、畜産家皆さんの遵守事項ですので漏れがあることはありえません。ましては認証農場ではあること自体問題ですから、必ず一覧図にして置きましょう。

では、7原則の考えを取りれていきます。
農場HACCPではHACCPの考えである7原則12手順に従った構築となり重要です。
ちなみに手順1は第3章のHACCPチームの編成から始まります。第3章では手順1から5を作り、この第4章では手順6から12を作ります。手順6から12までは原則1から7まで同じです。

①危害要因をしましょう(原則1)
危害要因分析は、すべての資料・記録表を基に危害を予測し、予防手段を文書化するのです。
全ての原料と作業分析シートごとに「生物的」「化学的」「物理的」の観点で評価します。
生物的とは、病原微生物や食中毒菌の侵入や残存・汚染があるのかどうか、化学的とは、薬剤の使用による残留や混入・汚染があるかどうか、物理的は、家畜や生産物に異物の混入リスクがあるのか、
家畜では、餌に異物があり影響を及ぼすのか、又生産物に異物は混入するのか、髪の毛・金属片等の異物が想定できるのか分析し評価します。

特に意識していただきたいのは、食べて頂く消費者に影響があるのか、原料を食べる家畜に影響があるのかという視点で検討してください。
評価は点数式(リスク掛け算式)か◎△‐等の記号評価式があります。
一般的に点数式を採用される方も多く、いずれも、重篤性と頻度を基に評価し数値化・記号評価をします。

重篤性とは、それが起こるとどれだけ大きな影響を及ぼすのか、
重大である場合や法令違反である場合は数値3又は◎とし、
十分ある場合は、数値2、又は△とし、
極めて低いと評価できる場合は数値1、又は‐とします。

頻度とは、過去に起こり今後もあり得る場合、発生の可能性がある場合、可能性が低い場合と分けて評価します。
数値は3,2,1の順で評価し、記号も同様です。
数値の結果掛け算式は数値を掛け合わせて1,2,3であれば危害管理は普通レベルとなり「一般的衛生管理(PRP)」で可能です。
数値6であれば重点管理するHACCP計画(CCP)で管理又はPRPで管理します。
数値9であればHACCP計画で管理します。

決定根拠は、例えば畜舎の清掃であれば、清掃不備は大きな家畜や製品へのリスクが少ないことからPRPで管理が可能と判定といえます。
鶏卵であれば、滞留卵(畜舎から何らかの理由によりGPセンターまで運ばれず滞留し品質劣化が起こりえる鶏卵)の監視を行い、廃棄を行うことで消費者への製品事故を未然に防げることから、CCPとして重点管理すると言う評価もできます。
なお、評価する際には法令理解があること、畜産の衛生学又は衛生の考えを十分理解しれいることが重要です。そのためにもHACCPチームの意識は大事なのです。専門家が考えることもあります。
もしお困りでしたらご相談ください。

②必須管理点を作ります(原則2)
いわゆるHACCP計画の作成に入ります。基本的に畜種によりますが作成必須ではありませんが、多くは1つ以上は設定されます。逆にない場合は質問されます。
畜種により設定が望ましいとされる傾向があります。
さて、そのHACCP計画ですが、まず必須管理点ですが「何の工程が安全性確保のため必須であるのか」ということから始まります。先ほどの危害要因6以上で採用するのか判定されたわけですから、一目瞭然です。
次に、許容限界の決定(原則3)をします。安全である限界はどこなのか定めます。法令により数値化されている場合はその数値が限界となります。
そのあと、監視(モニタリング)の方法を確立します。(原則4)
許容限界かどうか判断するためには監視をしなければなりません。測定したり、観察したり、確認することが重要でその手順をしっかり確立します。判断が的確に行えるようにも個人による曖昧な監視はいけません。
皆同じ基準でなければなりません。
そして、その事実が分かるよう記録しなければなりません。責任者との2重チェックも重要です。大事な作業工程ですから担当者・責任者ともにその内容を確認することが重要です。記録表もそのようになるよう構築します。
その後は、逸脱が発生したときの対応で、是正措置の確立(原則5)になります。
不幸にして、許容限界を逸脱した場合は
(1)逸脱した畜産物の取り扱い方法(回収や廃棄、他用途転用等)を自身で定めた方法で行います。
(2)正常へ戻すための方法を責任者により実施します。
(3)逸脱した原因の究明
(4)再発防止策の設定
と進んでいきます。実施したこと、検討したこと全てを記録しておくと次の検証の際にも参考になります。恥をさらすということで外部に示したくないと言う声も聴きますが、多くは次回も同じことをしており繰り返ししているような農場に多く見られる発言です。ですから、起きた事実は変えられない。であれば同じことを繰り返さないという姿勢が大事なのです。

③検証方法の決定(原則6)
HACCPシステムは一度完成すれば終わりとなりません。常に時代や農場にあった内容に見直しをされるべきものです。このため見直し時期を定め計画的かつ定期的に行います。

④文書や記録方法を確立(原則7)
今お話した内容は口頭でやり取りはしません。文書化されていなければなりません。ですから文書にして保存して見直しをしていきます。そして、記録も記録表を整備し日々の活動が見えるようにしておく必要があります。その中では責任者が必ず目を通していることが分かるように書式を整備しておくことが重要です。


いかがでしょうか。
本丸である第3章第4章はこれだけではないのですが、大事な個所をお話しました。ここに最大の力を注ぐ必要がありますが、出来上がれば指導者の指示のもとシステムを動かし試験運転も可能です。

それにより不備や改良をしていくことが出来ます。ここの完成がシステム稼働できるか断念するかの一つの境になります。

困りごとは是非専門家に助言を求めてみてください。
次回はシステムを動かすことで重要な教育についてお話をいたします。
さあ、あと少しで完成です。
頑張ってまいりましょう。
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